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Haswellを搭載したThinkPad新製品の登場に合わせ、レノボグループのワールドワイド競合アナリストである ケビン・ベック氏へThinkPad製品についてのインタビューをさせて頂く機会を頂きましたので、その内容をご紹介いたします。

記事の内容は、私の質問に対してケビン・ベック氏からお聞きした事をそのまま掲載している部分もあれば、噛み砕いてまとめてある部分もあります。

若干表現が違っている所や、ひょっとして聞き間違いをしている所もあるかもしれませんので、参考程度にお読みいただけますと幸いです。



新製品でバッテリを2つに分けた理由について

Haswellを搭載する新しい製品にはT440sやX240s、X240など、バッテリを2つ搭載するモデルが存在します。

これらのモデルはモバイル用のノートとして利用される事が多い製品ですが、今回なぜバッテリを2つに分けたのか(スペース的な理由からなのか、あるいはホットスワップを可能にするため・・など)という質問をさせていただきました。




バッテリを2つ搭載するX240s

選択する構成にもよりますが、T440sやX240s、X240はUltrabookの仕様に準拠する薄さと軽さを備えています。

一般的に、Ultrabookには着脱不能なバッテリが搭載される事が多いですが、バッテリの交換が行えないのは、PCの用途や利用シーンによっては不便ではないかと考え、X240やT440sに搭載されるバッテリの一方に着脱可能なバッテリを採用したのだとか。

例えば、携帯性を重視したい場面では3セル+3セルといった軽いバッテリの組み合わせを選択すれば良いですし、出張などでバッテリライフを重視するような場合には、片方を大きなバッテリに交換するなど、ユーザーの使い方にあわせたPCの運用が可能となります。

バッテリを2つ搭載しているため、片方に電力が残っていれば電源を落とさずにバッテリの交換(ホットスワップ)ができるという所も、ユーザービリティに優れています。



EdgeシリーズがEシリーズに変更されたのはなぜでしょうか

従来は「Edgeシリーズ」というブランド名で販売された製品が、Haswellを搭載したモデルより「Eシリーズ」という名称に変更されましたが、それはなぜか?という質問です。


一番の理由はブランディングを統一するため。

XやTシリーズ、Lシリーズ、Wシリーズと同じThinkPadブランドでありながら、Edgeシリーズだけ異なった名称を採用しているのは、顧客からみるとわかり難く混乱させてしまうため、Eシリーズに変更したとの事。

ただ名称が変わっても、製品そのもののコンセプトは変わっていないそうで、従来の製品と同じだと考えて間違いはないようです。



5ボタントラックパッドの採用の理由をお聞かせください

今年(2013年)の新製品でThinkPadを新しいデザインに一新すると同時に、トラックポイント側のボタンを統合した5ボタントラックパッドが登場しました。

これまではクリックボタンをタッチパッドに一体化させながらも、トラックポイント側のボタンは従来通り独立して存在していましたが、なぜ今回5ボタンのトラックパッドを採用したのかという問いについて。




X240の5ボタントラックパッド

ケビン・ベック氏のおっしゃる所によると、今回、ThinkPad全シリーズのデザインを変更するにあたって、大規模な調査を実施されたそうです。

具体的には各国のユーザーを対象に3つのグループに分け(昔からのThinkPadユーザーや、世代の若いユーザーなど)、何千時間もの検証と調査を行い得られたフィードバックをもとに、新しいデザインを開発。

フィードバックからは様々なテーマが得られましたが、中でもデザインをよりシンプルにして欲しいという声、またWindows 8でジェスチャー機能を利用するためにパッドを大きくという声があったそう。

パッドを大きくするにはトラックポイント側のボタンを統合するしか無いという事で、大和研究所のエンジニアがこれまでのものとは違う、新しいタイプのトラックパッドを開発。

もちろん、従来からのトラックポイントの操作性を損なわないようにする必要もあり、トラックパッドの下にはThinkPadのキーボードの下に入っているパンタグラフと同じものが使われるなどといった工夫が取り入れられているのだとか。


慣れないために使い難いという声もあるようですが(私自身も慣れていないからか、以前のものより使い難いように思います)コントロールパネルのマウスオプションより、ボタンのゾーン(ボタンが反応する範囲)設定を行う事が可能だそうで、自分に適した設定ではまた使い勝手も違ってくるのかもしれません。

ちなみに今の所、トラックパッドとボタンを再び分離する予定は今後の製品にはないとの事。



新製品のデザイン一新の理由と、開発の過程で苦労した話などがあればお聞かせ下さい

5ボタントラックパッド採用の話とかぶってしまうのですが、今回ユーザーからのフィードバックにより様々なテーマがでてきたのだとか。

現在ノートPCを使っているユーザーと、昔のノートPCユーザーとの違いもその一つで、それこそ10年前などだと、仕事用のPCと個人で使うPCは基本的に別物で、仕事で使うものは多少重くても、信頼性の高いものが推奨されました。

しかし現在は日本はともかく、グローバルではBYOD(Bring Your Own Device)という言葉もあるように、個人向けに購入したPCやスマホ・タブレットを会社に持ち込んで業務に使用するという流れが大きくあり、個人向けとビジネス向け両方の要件を満たす必要が出てきます。

これまでの堅牢性や信頼性を維持しながらも、個人用途向けには軽さや薄さなどの要素も重要になってくるため、新しいデザインはそれらの両立をコンセプトとして設計されているそうです。



なお、開発の過程で苦労したのは、どうやって薄さと堅牢性を両立するのかという事。

薄さを実現しながら堅牢性や信頼性を両立するのは簡単な事ではなく、薄型化しつつ従来のモデルで実施されていた拷問テストを全てクリアしなくてはならないため、デザイナーやエンジニアの方々はかなり苦労したのだそうです。


最薄の構成では17.7mmという薄さの ThinkPad X240s


X230とX240sの背面の高さを比較 大幅に薄型化されています

例えばこれまでは、HDDへの衝撃を軽減するためにゴム製のレールをHDDの外側に付けていましたが、その方法だとどうしても厚みが増してしまうため、新製品ではHDDのブラケットデザインを変更。

これにより約1.6mmもの薄型化を実現しつつ、衝撃吸収性能を向上させています。

またボトムカバーのデザイン変更や、X240sにおいては薄さと強さを両立する為に従来だとX1 CarbonやT430sのみに使われていたカーボンファイバーを採用。これにより軽さと強度を両立できるのだそうです。

きりがないので全てはあげませんが、他にも様々な箇所に工夫を施す事で、薄型化しつつ従来と同じような堅牢性や信頼性を維持しているのだとか。



今後、WiMAXのオプションはもう搭載されないのでしょうか

最近の製品にはWiMAXのオプションが提供されていませんが、今後の製品でも搭載されないのかという質問です。

話によると、インテルが提供する最新のチップセットでWiMAXが標準サポートされていないというのが、WiMAXオプションがなくなってしまった主な理由との事。

独自に搭載する事も可能だそうですが、世界的にみてWiMAXの需要があるのはロシアと日本しかなく、コストが見合わないために見送られているのだとか。

多分、WiMAXオプションの消滅はレノボだけではないと思います。



日本ではNECが795gという超軽量のノートPCを販売していますが、1kgを切るThinKPadは?

1kgというのは私の中の目安ですが、ThinkPadがそのくらい軽ければ良いのにという自分の希望から、このような質問をさせていただきました。

ケビン・ベック氏によると、ThinkPadは何よりも信頼性と堅牢性を大事にしており、薄さ軽さよりも去年よりも堅牢性の高いものを作る事ができるかという部分の方が重要との事。

もちろん薄く軽いPCを作ろうとはしているが、堅牢性を犠牲にしてまで軽くするつもりはなく、スペック上の数値目標も設定していないそうです。

個人的には海外で軽量化へのニーズがないために、積極的に軽い製品を開発されていないのではと思っていたのですが、海外(US)ではTシリーズの方が人気は高いものの、モバイルに対する需要は世界的にあるので、今後もモバイル製品を縮小する事はないとの事。



あとがき

今回色々とお聞きした中で面白いと思ったのは、軽量である事はもとより、解像度に拘るのは日本人特有の特徴なのだとか。

日本人が軽さを求めるのは、主な移動手段に電車を利用する事が多いとか体格の違いなどもありますが、解像度は初耳でした。大きい画面のPCを使う事が多いのなら、なおさら解像度の高い液晶を・・と私なら考えるのですが、海外ではどうも違うようです。

なお、アメリカなどでは軽さはあまり重視されていませんが、バッテリーライフに関しては別で、ACアダプターなどを持ち歩かずに済むのであれば当然その方が良いに決まっているので、バッテリ駆動時間の長さは海外でも重視されているのだそう。


あと堅牢性・信頼性に関しては、私自身はPCを乱暴に扱うような事はまずないので、堅牢性よりもどちらかというと軽さと操作性を求めてしまうのですが、例えば会社から支給されるPCは扱いが雑になる傾向があるという話を聞きます。(自分で買ったPCではないからでしょう)

ビジネスモデルである以上、そういった雑な扱いにも耐えられるような堅牢性を持ち合わせていなければいないわけで、ケビン・ベック氏がおっしゃられている事はもっともだと思います。

PCの購入を検討する際、多くの場合は軽さやスペック・価格などに目を奪われ堅牢性などは後回しになりがちですが、ThinkPadの開発においては、業務向けのマシンとしてはおざなりにはできない部分を最も重視しているのだという事を改めて認識しました。


とはいっても、使う側にとっては軽いに越したことはありません。
では別の製品を使えば?という声もでるかもしれませんが、キーボードなどの使いやすさを考えると、使用時間の長いメインPCにThinkPad以外の製品を使う事が考えられず・・

今後、現在の堅牢性を保ちつつ、軽量化されたThinkPad(1kg以下のXシリーズなど)が登場する日を心待ちにしています。