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2010年10月15日に、NVIDIA Optimus というテクノロジを搭載した
Thinkpad Tシリーズのカスタマイズ販売が開始されました。

その際の記事で、この NVIDIA Optimus というテクノロジとは、
自動でディスクリートGPUと内蔵GPUの切替を行う事により、快適なパフォーマンスと省電力性を両立する技術だと述べたのですが、その時点では、Optimusは以前より存在していたスイッチャブル・テクノロジを少し進化させたようなものだと考えていました。

NVIDIA Optimus テクノロジ

ですが先日行われたイベントのプレゼンで NVIDIA Optimus の詳細をお聞きし、
以前のものとは比べ物にならないくらい利便性の高い技術、
今後のノートPC製品において非常に重要になるであろう技術だという事を知り・・

というわけで今回の記事では、お聞きした プレゼンの内容を中心に、
NVIDIA Optimus の概要について触れてみたいと思います。

その後、別記事で改めてOptimusを搭載したTシリーズの特徴などを掲載します。


NVIDIAのスティーブ・ザン氏

NVIDIA Optimus の概要については、
NVIDIAのマーケティング エンジニア スティーブ・ザン氏よりご解説頂きました。

同氏によると、今回のTシリーズに搭載されている NVIDIA Optimus は、
今年の頭に発表されたノートPC向けのグラフィックステクノロジーで、
バッテリー寿命とパフォーマンスを両立する事が可能な、魔法のようなテクノロジーだとの事。


まずは、GPU周辺の話から。

ノートPC 全世界出荷台数

上記の表は、PCの全世界の出荷台数。
緑がノートPCオレンジがデスクトップPCの出荷台数を表しています。

見ての通り、2008年頃よりノートPCの出荷台数がデスクトップPCを追い越しており、
この傾向は今後も続くだろうとの事です。



現在のノートPCでのディスクリートGPU採用率

こちらは、現在出荷されているノートPCで、
どの程度ディスクリートGPUが採用されているかのグラフです。

2007年よりGPUの採用率が上昇しており、2009年には40%に達しています。

この上昇の大きな理由として、
ここ数年でGPUパワーを必要とするアプリケーションが急速に増え、
GPUの採用を後押ししている事などがあげられます。

今後もGPUの需要は伸びていくでしょう。



ビジネス向けグラフィックスの基準

その中で、今回のTシリーズにも採用されている NVIDIA NVS グラフィックス は、
ビジネス用に特化されたGPUで、ビジネスシーンに応じた幾つかの特徴があります。

まず、今回取り上げられている Optimusテクノロジー。
このテクノロジーは、素晴らしいバッテリー寿命を可能にします。

また生産性の面においては、最大4画面のマルチモニターをサポート
それに加えてアプリケーションとウェブの高速化の実現・・
これは画像向けのアプリケーションであったり、最新機能を持つオフィスであったり、
GPU性能を必要とするアプリケーション等のパフォーマンス向上に貢献します。

信頼性の面では、コンシューマー向け製品と比べてNVSはビジネス向けな為、
より万全なハードウェア、ソフトウェアの検証を行うと共に、
長い製品ライフサイクルを備えているとの事。

そしてエンタープライズ環境向けの設計として
メンテナンスが容易であったり、企業向けサポートなども提供されています。


これらの特徴のうち、特に詳しく添えたいのが・

グラフィックスによる生産性の向上について

マルチモニターをサポートしているという部分。

Optimusを搭載する事により、マシン上で2つのGPUを同時駆動する事が可能になり、
最高で4つのディスプレイをサポートする事が可能になります。
(Thinkpadの画面と、その他3つのディスプレイを利用する事が可能)

マルチモニター環境はデイトレーディングやCAD他、
様々な作業において生産性の向上が認められています。

また高性能GPUを搭載する事によって、Adobe Photoshopやオフィス、
次世代のウェブブラウザにおいてのパフォーマンスが向上し、生産性が上がります。



次世代ブラウザでのGPUによるパフォーマンスの違い

なお、上でアプリケーションがマシンへのGPUの採用を後押ししていると述べましたが、
例えば次世代のWebブラウザ、ここではIE9やFirefox4.0、Chrome 6等では
様々な箇所の描画をGPUで高速化させる事ができるようになっており、
NVIDIAグラフィックスと内蔵グラフィックスでは、約3倍のパフォーマンスの差があるそうです。

そういうわけで、日常的なアプリケーションでも様々な部分でGPU性能が必要となってきており、
パフォーマンスを追及するのであれば、GPU性能は無視できません。



パフォーマンスとバッテリー寿命の関係

そのように、パフォーマンスを追求するノートPCユーザーが、
GPUを重視している中、もう一つ重視されるポイントがバッテリーの寿命

これらは常にトレードオフの関係にあり、従来のテクノロジーでは、
パフォーマンスを上げる為にはバッテリー寿命を犠牲にしなくてはならず、
そのバランスが難しい所でした。



バッテリー寿命とパフォーマンスのトレードオフ

上記の表のように、内蔵グラフィックスのみのPCではバッテリ駆動時間は延びますが、
パフォーマンスは犠牲になってしまいます。

ですがディスクリートGPUを搭載すると、パフォーマンスの向上は望めますが、
その分バッテリー寿命が犠牲になります。



NVIDIA Optimus

そこで登場するのが、今回のNVIDIA Optimusテクノロジー。

必要な時だけディスクリートGPUをオン・オフする事により、
内蔵GPUのみ搭載のノートPCと同等のバッテリー寿命(最大)を維持しながら、
必要な時だけディスクリートGPU搭載のノートPCと同じパフォーマンスを実現する事が可能になります。

このように、ノートPCでバッテリー寿命とパフォーマンスの両立を可能にしたのがOptimusで、
今回登場したThinkpad T シリーズ にはそのテクノロジーが搭載されています。


ちなみに、このOptimusテクノロジは最近出てきたものではなく、
現在の形に至るまでは少し歴史があるとの事。

Optimusテクノロジの歴史

数年前から、グラフィックス内蔵のノートPCにディスクリートGPUを搭載しながら、
バッテリー寿命を維持するにはどうすれば良いのかという課題があり、
スイッチャブル・グラフィックスという技術が開発されました。

このスイッチャブル・グラフィックスいう技術は、
ノートPCに内蔵グラフィックスとディスクリートGPUを搭載し、
場合に応じて切り替える
という技術で、一見Optimusと似たテクノロジのように思えますが、
中身は全く異なります。


このスイッチャブル・グラフィックスにも段階があり・・

最初の頃にはグラフィックスを切り替えるにはPCの再起動が必要でした。
しかしそれでは余りに実用性にかけています。

という事で改善を進めた後に出来上がったのは、
再起動は不要、ただし全てのアプリをシャットダウンして切替を行うというもので、
最初のものよりはましになったものの、相変わらずアプリを閉じたり手動切替の手間が残りました。

もう少しどうにかならないものかという事で、理想的なシステムとして登場したのが、
再起動もログオフもアプリケーションのシャットダウンも不必要、
かつ、自動判断で最適なGPUに切り替える事が可能なソリューション、
NVIDIA Optimusテクノロジーです。


パフォーマンスが必要な時にはディスクリートGPUが自動でオンになり、
そうでないときには内蔵グラフィックスのみの動作で消費電力を節約します。
その間、ユーザーが特に何かを行ったり意識する事もなく・・

Optimusは、まさにスティーブ・ザン氏が最初におっしゃっていた「魔法のようなテクノロジー」です。


と、ここで技術的な話に移ります。

スイッチャブル・グラフィックスの概念図

スイッチャブル・グラフィックスの概念図2

上は前世代のスイッチャブル・グラフィックスの概念図です。
(上が内蔵グラフィックス駆動時、下がディスクリートGPU駆動時)

スイッチャブル・グラフィックスではMuxというハードウェアチップが実装されており、
そのハードウェアチップが画面に繋がるGPUを選択していました。

内蔵グラフィックス駆動の時には、スイッチ(Mux)は内蔵グラフィックスに繋がっており、
その出力が直接画面にでます。

しかしGPUを切り替えるときには、
今まで内蔵グラフィックスで使用していたアプリケーションを閉じてスイッチを切替え、
ソフトウェアが安全と判断された後に画面が切り替わるという仕組みになっている為、
どうしても切替時にある一定の作業が発生してしまいます。



Optimusの概念図

Optimusの概念図2

次にOptimusの概念図

スイッチャブル・グラフィックスとの大きな違いは、
常に内蔵グラフィックスがディスプレイコントローラーを通して作動
ディスプレイへの出力を行っているという部分で、
ディスクリートGPUが必要とされない時には、ディスクリートGPUはオフ状態で電力を消費しません。

しかしGPUの性能を必要とするアプリが起動すると、すぐにディスクリートGPUがオンになり、
そのアプリの処理をディスクリートGPUが担当。(その間も内蔵グラフィックスは作動している)

そして描画されたその部分だけを、内蔵グラフィックスのフレームバッファに転送し、
それを内蔵グラフィックスが今まで通り画面に出力します。

ですのでアプリケーションをシャットダウンする必要はなく、
必要な時だけディスクリートGPUを動作する事が可能となります。


しかし、ディスクリートGPUで描画したものを、ディスクリートGPUのフレームバッファから
内蔵グラフィックスのフレームバッファへ移動させて表示するには危険が起こるのではないか?


・・などという問題に対しても、
GPUに実装された専用のコピーエンジンが解決しているとの事。



専用コピーエンジンなしでのフレームバッファ転送

通常(専用コピーエンジンなし)だと、グラフィックスエンジンが描画や演算を一時停止して、
DMAオペレーション(メモリ転送作業)をしなければならないので、処理のストールが起こり、
その結果、パフォーマンス全体が低下してしまいます。



NVIDIA Optimusコピーエンジンの転送

しかし、NVIDIA OptimusをサポートしているGPUには、
Optimusコピーエンジンというハードウェアが実装されており、
グラフィックスエンジンとは独立した非同期のメモリー転送が可能となっています。

Optimusコピーエンジンを用いて高速なPCI Expressバスを通し、
内蔵グラフィックスのフレームバッファへ転送・出力させる事で、
処理のストールやパフォーマンスの低下を防ぐ事ができるのです。




なおディスクリートGPUが起動する時間はとても短く、
切替時にブラックアウトなども起こらない為、ユーザー側にはこのプロセスが全く見えません。

ユーザーは切り替えを全く意識すること無く、
常にバッテリ寿命とパフォーマンスのバランスを最適に保った状態でPCを利用する事が可能となります。



NVIDIA Optimus

少し長くなりましたが、プレゼンテーションで解説いただいた、
NVIDIA Optimusの概要については以上となります。

先日、販売開始されたThinkpad T410s T510 などのTシリーズ全般には、
上記のような素晴らしいテクノロジーが搭載されており、
これまで以上に注目を集めるのではないかと思います。

なお、既存の Thinkpad T シリーズユーザーのOptimus対応予定は現時点ではないとの事です。




ちなみに現在、ウェブで販売されているTシリーズに関しては、全てCTOでOptimusの選択が可能です。

Optimusは、今後 T410sなどのTシリーズの購入を検討されている方には、
非常に魅力的なテクノロジーなのではないかと思います。


今回はNVIDIA Optimusに関しての内容が中心となりましたが、
次回は Thinkpad 製品で NVIDIA Optimus を搭載するまでの経緯や、
Optimusで具体的にどのような機能を実現する事ができるのかなどについて、見ていきたいと思いますので、
Optimus搭載のThinkpadに興味がありましたら、次記事もご覧下さい。